- HOME>
- 股関節の痛み

股関節は、体重を支えながら脚を様々な方向に動かす役割を持つ、体の中で最も大きな関節の一つです。
そのため、股関節に痛みや問題が生じると、「歩く」「座る・立つ」「階段を上り下りする」「靴下を履く」といった日常の基本的な動作が困難になり、生活の質(QOL)に大きく影響します。
股関節の痛みは、足の付け根(そけい部)だけでなく、お尻や太もも、時には膝のあたりに痛みを感じることもあります。痛みの原因は様々ですので、正確な診断に基づいた適切な治療が重要です。
股関節の痛みで整形外科を受診すべき症状
以下のような症状がある場合は、ご相談ください。
1. 痛み
- 歩き始めや、長時間歩いた後に足の付け根やお尻、太ももが痛む。
- 椅子から立ち上がるときに痛む。
- 階段の上り下りで痛む。
- あぐらをかく、靴下を履く、足の爪を切るなどの動作で痛む。
- 安静にしていても痛む、夜間に痛む。
2. 動きの制限
- 股関節の動きが悪くなった、可動域が狭くなった(開脚しにくい、あぐらをかけないなど)。
- 足を引きずるように歩いてしまう(跛行)。
3. その他の症状
- 股関節周辺で音がする、引っかかる感じがする。
- 急に股関節が痛くなり、体重をかけられなくなった(特に転倒などの後)。
- 発熱や腫れを伴う。
股関節の痛みの主な原因
関節自体の問題
変形性股関節症
日本で最も多い股関節疾患です。加齢や体重増加、あるいは子供の頃の病気(先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全など)が原因で、関節の軟骨がすり減り、骨が変形して痛みや動きの制限が生じます。
進行すると歩行が困難になり、手術(人工股関節置換術など)が必要となる場合があります。
大腿骨頭壊死症
大腿骨の骨頭(太ももの骨の先端の丸い部分)への血流が悪くなり、骨組織が壊死してしまう病気です。
原因不明の場合もありますが、ステロイド薬の長期使用やアルコール多飲がリスク因子とされます。進行すると骨頭が潰れて痛みが生じ、手術が必要となることが多いです。
関節リウマチ
免疫の異常により股関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、進行すると関節破壊・変形をきたします。
股関節インピンジメント(FAI)
股関節の骨の形態的な異常により、動かした際に骨同士が衝突(インピンジメント)し、軟骨や関節唇(関節の縁にある軟骨)を損傷して痛みを生じます。
若い世代やスポーツ選手にも見られます。
股関節唇損傷
上記のFAIや外傷などにより、関節の縁にある軟骨(関節唇)が損傷し、痛みや引っかかり感の原因となります。
関節周囲の問題
滑液包炎
関節の周りにある滑液包(衝撃を和らげる袋)が炎症を起こし、股関節の外側(大転子部滑液包炎)やお尻、足の付け根などに痛みが出ます。
筋肉・腱の損傷や炎症
股関節周りの筋肉(殿筋、腸腰筋、内転筋など)や腱の使いすぎ、柔軟性低下によって炎症や肉離れが生じ、痛みが出ます。
子供に多い原因
単純性股関節炎
明らかな原因なく、一時的に股関節に炎症が起こり、痛みが出ます。
通常は安静で改善します。
ペルテス病
大腿骨頭で最も端にある大腿骨頭骨端部が壊死する病気です。
5-7歳の男児に多く、原因は不明ですが、大腿骨頭への血流障害や内分泌異常、血液凝固系異常、外傷などが考えられています。壊死部の修復には2-3年かかります。
スポーツによるもの
グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)
サッカー選手などに多く、足の付け根(鼠径部)周辺に痛みが起こる状態です。
様々な原因(内転筋腱障害、スポーツヘルニア、股関節自体の問題など)が複合的に関与していることが多いです。
恥骨結合炎
サッカーやランニングなどで、左右の恥骨をつなぐ部分(恥骨結合)に炎症が起こり、痛みが出ます。
疲労骨折
ランニングなどで繰り返しの負荷がかかり、大腿骨頸部や骨盤に疲労骨折が起こることがあります。
診断と治療
診断
- 症状、痛みの部位やきっかけ、これまでの病歴、スポーツ歴などを詳しく伺います。
- 歩き方、股関節の可動域、筋力、特定の動きで痛みが出るかなどを診察します。
- レントゲン検査で、骨の変形、関節の隙間の狭さ、骨折の有無、骨形態(FAIや臼蓋形成不全)などを確認します。
- 必要に応じて、超音波(エコー)検査で関節内の水腫や滑液包炎、股関節周囲の筋肉・腱の状態を確認し、提携病院でMRI検査(大腿骨頭壊死、関節唇損傷、軟骨の状態、疲労骨折など)やCT検査を行います。
治療
保存療法
安静・生活指導 | 股関節に負担をかけない生活(体重管理、杖の使用、動作の工夫など)を指導します。 |
---|---|
薬物療法 | 消炎鎮痛薬(内服、外用)で痛みや炎症を抑えます。 |
注射療法 | 関節内へのヒアルロン酸注射やステロイド注射(炎症が強い場合)、滑液包へのステロイド注射などを行います。 |
リハビリテーション | 股関節疾患の治療において非常に重要です。理学療法士が、股関節周りの筋力強化(特に殿筋群)、ストレッチによる柔軟性・可動域改善、正しい歩行や動作の指導、物理療法などを行います。 |
再生医療 | 変形性股関節症などに対し、PRP療法が選択肢となる場合があります(※自費診療)。 |
手術療法
保存療法で痛みが改善しない場合や、変形性股関節症や大腿骨頭壊死が進行し日常生活に著しい支障が出ている場合、特定の骨折やFAI、関節唇損傷などに対して手術が検討されます。
手術には人工股関節置換術(THA)、骨切り術、関節鏡視下手術(FAI、関節唇損傷など)などがあります。
手術が必要な場合は、連携する専門病院をご紹介します。
.jpg)
股関節の痛みは、放置すると進行し、歩行能力の低下につながることが少なくありません。足の付け根やお尻の痛みが気になる方は、我慢せずに早めに整形外科を受診し、原因に応じた適切な治療を開始しましょう。