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- 脚・足首・足の痛み

「下肢」とは脚全体を指しますが、ここでは股関節や膝を除いた、すね(下腿)、ふくらはぎ、足首(足関節)、かかと、足の裏(足底)、甲、つま先などに生じる痛みやしびれ、その他の不調について説明します。
脚や足は、全体重を支え、歩行や走行、ジャンプといった動作の基盤となる重要な部分です。そのため、この部分に痛みや問題が生じると、日常生活やスポーツ活動に大きな影響が出ます。腰からの神経症状が脚に出ることもあれば、脚や足自体の骨、関節、筋肉、腱、靭帯、血管などに原因がある場合もあります。
脚・足首・足で整形外科を受診すべき症状
以下のような症状がある場合は、ご相談ください。
1. 痛み
- 歩くとすね、ふくらはぎ、足首、かかと、足裏などが痛む。
- 特定の動き(つま先立ち、しゃがむなど)で痛む。
- 安静にしていても痛む、夜間に痛む。
- 立ち上がりや歩き始めに特に痛む。
- 足の特定の場所を押すと強く痛む。
2. しびれ・感覚異常
- 脚や足にしびれ、ジンジン感、灼熱感、冷感がある。
- 感覚が鈍い。
3. 歩行の問題
- 歩きにくい、足を引きずる。
- 足に力が入りにくい、つまずきやすい。
- しばらく歩くと痛みやしびれで歩けなくなる(間欠性跛行:腰部脊柱管狭窄症の可能性あり)。
4. 見た目の変化・腫れ
- 足首や足が腫れている、むくんでいる。
- 皮膚が赤くなっている、熱を持っている。
- 皮下出血(あざ)がある。
- 足の形が変わってきた(外反母趾、扁平足など)。
- 明らかな変形(ケガの後など)。
5. 不安定感
- 足首がぐらつく感じがする、捻挫しやすい。
脚・足首・足の痛みの主な原因
足首(足関節)の問題
足関節捻挫
スポーツや段差などで足首をひねり、靭帯を損傷した状態です。
最も多いケガの一つですが、放置すると不安定性が残り、捻挫を繰り返しやすくなることがあります。
変形性足関節症
捻挫や骨折の後遺症、加齢などにより、足首の軟骨がすり減り、痛みや腫れ、動きの制限が生じます。
足関節不安定症
捻挫の後遺症などで靭帯がゆるみ、足首がぐらつく(ゆるい)状態です。
足部の問題
外反母趾
足の親指が小指側に「くの字」に曲がり、付け根の関節が突き出して痛む状態です。
靴との摩擦でさらに痛みが強くなります。装具やサポーター装着、足趾の運動などの保存療法を行います。変形が中等度以上に進行し、症状が強い場合は手術が検討されます。
扁平足
土踏まず(足のアーチ)が崩れ、足が疲れやすくなり、痛みが出たりします。
後脛骨筋腱機能不全などが原因となることがあります。
アーチサポート装着や足趾・足関節の運動などの保存療法を行います。
神経の問題
モートン病(Morton disease)
足指の付け根で趾神経が圧迫され、指先へのしびれや灼熱感を伴う痛みが生じます。
症状が強い場合は手術が検討されます。
足根管症候群
足首の内側で脛骨神経が圧迫され、足裏にしびれや痛みが生じます。
原因は、足首の捻挫や打撲、偏平足、骨折、腫瘤、運動不足、肥満などです。
腰由来の神経症状(坐骨神経痛など)
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などにより、腰の神経が圧迫され、お尻から脚、足にかけて痛みやしびれが出ることがあります。
その他の原因
痛風発作
足の親指の付け根などに突然激しい痛みと腫れが起こります。原因は尿酸値の変動によって引き起こされた関節炎のため、発作時は鎮痛薬で症状を軽減し、症状消失後から尿酸値のコントロールを行います。
下肢静脈瘤、閉塞性動脈硬化症
血行障害により、脚のだるさ、むくみ、痛み、冷感などが生じることがあります(疑われる場合は専門科へ紹介します)。閉塞性動脈硬化症の場合は間欠性跛行が生じます。
スポーツによる脚・足首・足の障害・外傷
肉離れ
ふくらはぎ(下腿三頭筋)や太もも(ハムストリングス、大腿四頭筋)の筋肉が、急なダッシュやストップ、ジャンプからの着地などで部分的に断裂する状態です。
ハムストリングは10-20代、ふくらはぎは30代以降に好発します。
アキレス腱断裂
スポーツ中の踏み込みやジャンプなどでアキレス腱が完全に断裂するケガです。
「ふくらはぎを蹴られた感じ」「ブチッという音」が特徴です。
超音波検査(エコー)で手術適応の判断をします。
近年、保存療法による良好な治療成績が報告されています。
シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)
すねの内側(脛骨)の下方に痛みが生じる、ランニングなどのオーバーユース(使い過ぎ)による障害です。
リハビリテーションで、筋肉強化や柔軟性改善などをおこなうことが大切です。
疲労骨折
繰り返しのジャンプやランニング、ダッシュなどの負荷により、すねの骨(脛骨、腓骨)や足の骨(中足骨など)にひびが入る骨折です。初期は運動時のみの痛みですが、進行すると安静時にも痛むようになります。
早期診断・早期治療が重要です。
足関節後方インピンジメント症候群(PAIS:Posterior Ankle Impingement Syndrome)
バレエダンサー(ポアント動作)やサッカー選手(キック動作)など、足首を強く下に伸ばす(底屈)動作を繰り返すことで、足首の後方にある骨(過剰骨である三角骨など)や軟部組織が挟み込まれて痛みや炎症が生じる状態です。
足首の後方の痛み、腫れ、動かした時の引っかかり感などが主な症状です。
レントゲンや超音波、MRIなどで診断し、治療は安静、リハビリテーション、注射などが行われます。
症状が改善しない場合は、関節鏡視下に関節内の骨や組織を切除する手術が検討されます。
コンパートメント症候群
運動などにより、すねなどの筋肉内の圧力が上昇し、血行障害や神経障害を引き起こす状態です。
激しい痛みや腫れ、しびれなどが特徴で、緊急の処置が必要な場合があります。
診断と治療
診断
- 症状、受傷機転、生活習慣、スポーツ歴などを詳しく伺い、歩行状態、患部の診察(圧痛、腫れ、可動域、安定性、神経学的所見など)を行います。
- レントゲン検査で骨折、変形、関節の状態を確認します。
- 超音波(エコー)検査で、靭帯、腱(アキレス腱など)、筋肉、神経、軟部組織の状態を詳細に評価します。
- 必要に応じて、MRI検査(靭帯、腱、軟骨、疲労骨折など)、CT検査(骨折の詳細)、血流検査などを追加します。
治療
保存療法
RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上) | ケガの急性期に行います。 |
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安静・固定 | 症状に応じて、松葉杖での免荷、サポーター、テーピング、ギプス、装具などを使用します。 |
薬物療法 | 消炎鎮痛薬(内服、外用)、神経障害に対する薬などを処方します。 |
注射療法 | 痛みが強い場合、関節内や腱周囲へのステロイド注射(※アキレス腱周囲へは慎重投与)、ヒアルロン酸注射(足関節)、神経ブロック注射などを行います。 |
リハビリテーション | 理学療法士が、ストレッチ(特にアキレス腱や足底腱膜)、筋力強化、バランストレーニング、歩行指導、インソール(足底板)の相談・作製、物理療法(温熱、電気、超音波など)を行います。 |
先端医療 | 難治性の足底腱膜炎やアキレス腱炎、疲労骨折に対して体外衝撃波療法が有効な場合があります。腱炎や関節症、疲労骨折に対してPRP療法や動注治療が選択肢となります(※一部自費診療)。 |
手術療法
- 保存療法で改善しない場合や、重度の骨折、アキレス腱断裂、靭帯損傷による不安定性、進行した外反母趾、神経障害などに対して手術が検討されます。
- 手術は、骨折観血的整復固定術、靭帯再建・修復術、アキレス腱縫合術、関節固定術、人工関節置換術、外反母趾矯正術、神経剥離術などがあります。
手術が必要な場合は、連携する専門病院をご紹介します。
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脚や足の痛みは、歩行能力に直結し、生活の質(QOL)に大きく影響します。原因を特定し、適切な治療を行うことが重要です。症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。