非定型骨折(Atypical Femoral Fracture, AFF)は、骨吸収抑制作用のある骨粗鬆症治療薬が長期にわたって投与されることで正常な修復・再構築が抑制され骨が脆くなり、通常とは異なる部位や形態で生じる骨折です。
1. 非定型骨折の特徴
主に大腿骨骨幹部や転子部遠位に軽微な外力(例えば歩行や立ち上がり動作)で生じ、骨折が生じる数週間前から大腿部や鼠径部に鈍い痛みが生じることがある(切迫骨折)。
2. 関連する骨粗鬆症治療薬
ビスホスホネート系薬剤、デノスマブ(抗RANKL抗体)
骨吸収抑制作用によって骨密度増加に寄与するが、使用期間が5年以上になると骨のリモデリング抑制によって骨の脆弱化が生じ、非定型骨折を引き起こす可能性がある。
3. 診断
非定型骨折の診断は、臨床症状、画像所見、薬剤使用歴から行います。
画像は、X線やMRI検査、骨シンチグラフィーが有用です。
骨折の形状は特徴的で、横骨折や斜骨折
で皮質骨の肥厚を伴うことが多いです。また、両側に生じることがあり、健側の検査が推奨されます。
4. 治療
・保存的加療(安静、免荷)。
・手術加療(髄内釘固定など)。
・原因薬剤(ビスホスホネートやデノスマブ)の中止。
・骨癒合が得られにくい骨折のため、必要に応じてカルシウム製剤やビタミンD、骨形成を促進する薬剤(例: テリパラチド)の使用。
5. まとめ
・骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネートやデノスマブは、定期的な経過観察が必要です。
特に5年以上の長期内服はリスクとなるため、薬剤の使用中断(「休薬期間の確保」)が考慮されます。
また、低リスクの患者には、治療を最小限にすることも選択肢の一つです。