薬剤誘発性骨粗鬆症とは、特定の薬剤の長期使用が骨代謝に影響を与え、骨密度の低下や骨折リスクを増大させる状態です。
主な薬剤の特徴をまとめます。
1. グルココルチコイド(ステロイド)
例: プレドニゾロン、デキサメタゾン
機序: 骨形成の抑制、骨吸収の促進、カルシウム吸収の低下。長期使用では低用量でも骨粗鬆症リスクあり。
2. 抗エストロゲン薬
例:タモキシフェン(閉経前女性では骨密度低下)、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、レトロゾールなど)
機序: エストロゲン作用低下や減少により骨形成低下、骨吸収増加。
3. 抗アンドロゲン薬
例: ゴセレリン、リュープロレリン(前立腺癌治療薬)
機序: アンドロゲン(男性ホルモン)作用低下や減少に伴う骨形成低下、骨吸収増加。
4. 抗てんかん薬
例: フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸
機序: ビタミンD代謝亢進によるカルシウム吸収低下。
5. プロトンポンプ阻害薬(PPI)
例: オメプラゾール、ランソプラゾール。
機序: 胃酸分泌抑制によりカルシウム吸収低下。
6. 糖尿病治療薬(チアゾリジン薬)
例: ピオグリタゾン
機序: 骨形成の抑制、骨吸収の促進、骨質(骨強度)低下。
7. 免疫抑制剤
例: シクロスポリン、タクロリムス
機序: 骨代謝の抑制。
8. ヘパリンおよび低分子ヘパリン
例: ヘパリンナトリウム、エノキサパリン
機序: 長期使用で骨吸収亢進。
9. その他
利尿薬(フロセミド)や抗うつ薬(SSRI)、化学療法薬(メトトレキサートなど)など。
総合的な対策
1. 定期的な骨密度検査。
2. 生活習慣改善(適度な運動、禁煙、過度な飲酒の回避)。
3. 栄養管理(カルシウムとビタミンDの適切な摂取)。
4. 骨保護薬(ビスホスフォネート、デノスマブ)の併用検討。
薬剤誘発性骨粗鬆症の予防と管理には、リスクの高い患者の早期発見と個別の治療計画が重要です。