骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート製剤、デノスマブ)は、顎骨壊死との関連性が指摘されています。
顎骨壊死とは、その名の通り顎(あご)の骨が壊死することです。
1. 顎骨壊死の頻度
一般的な骨粗鬆症治療における顎骨壊死の頻度は約0.01~0.1%と低い。
がん治療(多発性骨髄腫、固形がん骨転移)に伴う高用量の骨粗鬆症治療薬を投与した場合は1~2%程度となります。
今回は、骨粗鬆症治療における顎骨壊死について記載します。
2. 顎骨壊死の原因
顎骨壊死の正確なメカニズムは未解明ですが、以下の要因が関連すると考えられています:
・骨リモデリング(新陳代謝)の抑制:
ビスホスホネートやデノスマブは、骨のリモデリングを抑制するため、顎骨の修復能力が低下し、壊死につながる。
・放射線照射:
頭頸部のがん治療に伴う放射線治療によって顎骨の血流が悪化し、生じる。
・外傷や感染:
歯周病や細菌感染
抜歯などの外科処置や歯周病による感染が顎骨へ負荷与え、また血流が悪化することで生じる。
3. 歯科治療の影響
抜歯やインプラント手術などの侵襲的な処置は、顎骨壊死を誘発するリスクがあります。ただし、現状では骨粗鬆症治療薬の休薬については否定的な意見が多いです。
その理由は、一時的な休薬が顎骨壊死のリスク低減に寄与する明確なエビデンスがないことと、休薬による骨折リスク増加の懸念があるためです。
ただエビデンスはまだまだ不十分であり、個別に判断する必要があります。
特に顎骨壊死の既往やリスク因子(糖尿病、喫煙、ステロイド使用など)がある場合は慎重な対応が求められます。
4. 顎骨壊死の予防策
骨粗鬆症治療の開始前に歯科検診を受け、先に歯科治療を行う。
骨粗鬆症治療中は、定期的に歯科で口腔内ケアを行い、良好な口腔衛生を維持する。
抜歯や外科的処置が必要な場合、可能であれば保存的治療を優先する。
まとめ
骨粗鬆症治療薬は、顎骨壊死のリスクを僅かに増加させますが、定期的な歯科ケアと医療者間の連携によってリスクを最小限に抑えることが可能です。患者ごとのリスクを評価しつつ、適切な治療と予防策を講じることが重要です。