1. 疫学
発生率:加齢とともに増加し、60歳以上では10%、80歳以上では30%以上に認められる。また、加齢とともに断裂サイズは拡大する。
性別:男性の方がやや多い。
リスク因子:加齢、職業・スポーツ、外傷、喫煙、糖尿病、高BMIなど。
2. 原因
変性(加齢による腱の摩耗)
腱板の血流が低下し、自然に断裂しやすくなる。
外傷(急性断裂)
転倒による打撲、肩関節脱臼、重い物を持ち上げるなどの急激な負荷。
反復運動(慢性断裂)
野球、テニス、水泳、バレーボール、バスケット、体操などのオーバーヘッド動作を伴うスポーツや、建設作業などで反復的に肩を使う動作。
3. 症状
疼痛(動作時痛や夜間痛)、肩関節可動域制限、筋力低下、易疲労感
4. 診断
X線:肩峰下や大結節の骨棘、上腕骨頭の上昇。
超音波検査:腱板断裂の部位、大きさや上腕二頭筋長頭腱損傷・脱臼合併の有無の評価。
MRI検査:超音波検査より詳細な評価ご可能。(腱板断裂部位、大きさ、筋萎縮の有無、上腕二頭筋長頭腱損傷・脱臼や関節唇損傷合併の有無など)。
4. 治療法
保存療法
局所安静・生活指導
痛みが強い場合は、痛みを誘発する動作は避ける。
薬物療法
各種鎮痛薬内服、湿布貼付。
運動器リハビリ
腱板筋力訓練、肩関節可動域訓練、肩甲骨周囲や胸郭・胸椎・体幹などの機能改善を行う。
超音波検査を使用した関節内注射(ステロイド、生理食塩水、PRP)、ハイドロリリース
炎症が強い場合や癒着が強い場合などに使用。(肩関節内注射やハイドロリリースは、超音波検査の使用が望ましい。超音波検査を使用しない肩関節内注射では、関節内へ注射出来ている確率は40-60%と報告されている。)
手術療法
腱板断裂は、加齢とともに発生率の増加、断裂サイズの拡大があるため、年齢や断裂サイズは手術適応の大きな判断材料となる。
関節鏡視下腱板修復術
腱板断裂部をアンカー(糸付きスクリュー)を使用して修復する。
手術後のリハビリは、数カ月から最大1年間必要。術後の再断裂率は、術前の断裂サイズに大きく依存する。
リバース型人工肩関節置換術:
広範囲腱板断裂で筋萎縮が進行した場合に適応となる。執刀医にはライセンスが必要。術後の局所安静の期間は比較的短い。
5. まとめ
肩腱板断裂は、加齢などで徐々に増悪するため、早期の診断と適切な治療が重要です。