反復性肩関節脱臼(Recurrent Shoulder Dislocation)について、疫学、原因、診断、治療法をまとめました。
反復性肩関節脱臼とは、肩関節の脱臼によってBankart損傷(前方から前下方の関節唇損傷)やHill-sachs病変(上腕骨頭後面の骨欠損)を生じ、易脱臼性となることである。
1. 疫学
前方脱臼が95%以上を占める。
初回脱臼後、10~20代の若年者では70~90%が再脱臼する。
30歳以上の初回脱臼では、再発率は低下するが腱板断裂を伴うことが多い。
リスク因子は、コンタクトスポーツ従事者(ラグビー、柔道、バスケットボールなど)、肉体労働者、関節弛緩性のある方など。
2. 原因
① 外傷性(外傷後反復性脱臼)
最も一般的な原因。
転倒やスポーツ中の衝撃で初回脱臼し、反復性へ移行。
② 非外傷性(自発性・弛緩性脱臼)
元々関節が緩く(先天的な関節弛緩性)、繰り返し肩を使うことで易脱臼性となる。(例:水泳、体操)
痛みが少なく、自己整復が可能な場合がある。
3. 診断
症状:不安定感、反復性脱臼
X線・CT検査:骨折の有無、骨欠損の大きさ(関節窩、Hill-sachs病変)の評価。
MRI検査:Bankart損傷や関節唇の評価。
4. 治療法
① 保存療法
初回脱臼は、受傷後3週間固定。
リハビリテーション(腱板筋力や肩甲骨周囲筋の強化、関節可動域訓練)。
② 手術療法
関節鏡視下Bankart修復術
損傷した関節唇をアンカーで修復し関節包の緊張を改善することで、肩の安定性を再獲得。
烏口突起移行術(Bristow変法、Latarjet法)
烏口突起を関節窩の前方から前下方へ移行することで、烏口突起に付着する共同筋腱によるハンモック効果と、烏口突起の移行による関節窩の拡大によって脱臼予防を図る。
術後6ヶ月後以降にスポーツ完全復帰。
5. まとめ
肩関節の脱臼は一度生じると、反復性に移行する可能性が高く、慎重な経過観察が必要です。
また、反復性脱臼に移行し、日常生活動作やスポーツ活動、仕事に支障をきたす場合は、手術適応となります。